「ゲームすんのか? オレもやる」
さあちょっと一戦しましょうかねと、テレビに繋がれたハードに手を伸ばせば、今までソファに寝っ転がっていた新一がいそいそとやってきた。オレは思わず舌打ちをもらす。
「何だよ。本読んでたんじゃねぇのかよオメー」
「あれもう三回目だから。何するんだ? あれにしようぜ、あれ。カーレースのやつ」
「三回目だって問題ないだろ熟読してろよ。つーか一緒にやるとか言ってねぇからオレ! 一人でやりてぇんだよ!」
「そのゲーム機うちのだぞ」
むっとしたように新一は言うが、そんなことはわかっている。あからオレも正々堂々言い返してやる。
「でもゲームソフトはオレのだから問題ねぇだろ」
「んじゃ家で一人でやってろよ。何でオレんちでやろうとすんだよ」
「バーロ、オレんちにPS3ねぇの知ってんだろオメー」
「ねぇのに何でソフト買うんだよオメーこそ馬鹿じゃねーの?」
「だからここでやろうと思って買ったんだよ! こっち来てる間しかできねぇんだから一人でやらせろっつの!」
「知るかよんなこと! んなもんオメーが自分でハード買えばいい話じゃねーか偉そうなこと言ってんじゃねぇよ!」
「はいはい二人とも、喧嘩するなら外でしましょうねー」
テーブルに紅茶をコーヒーをそれぞれ置いていってくれた有希子さんが、ついでとばかりにオレと新一の頭を叩いて去っていく。
「新一も快斗君も、仲良く遊ばないんだったらゲームは禁止にするわよ。それでもいいの?」
「オレは何もしてねぇだろ! こいつが嫌がってんじゃねぇかよ。ったく、このゲーム機だれのだと思ってんだよ!」
「それ、優作が貰ってきたやつでしょう? 息子さんがいるのならってプレゼントしてくれたらしいけど、新ちゃんが自分で買った物でも何でもないでしょう。偉そうなこと言わないのよ」
「……どっちにしろうちの物なことには変わりねぇだろ。なのに何でこいつが好き勝手使おうとしてんだよ、おかしいだろ……っ」
「好き勝手なんて使おうとしてねぇよ! ただな、オメーが破滅的にゲーム弱いから、一緒にやんのは嫌だっつってんだよ! 探偵ならわかれよそんぐらい!」
「何だよ破滅的に弱いってオメーっ!」
怒鳴りながら、新一が拳を握る。オレはそれを避けて反撃の構えを見せる。見せたがしかし、有希子さんが笑顔でこちらを見ていることに気付いて、どちらともなく絨毯の上に座り直した。
あまりヘマをこくのはまずい。何がまずいって、有希子さんとうちの母親は仲がいい。今のあらましを伝えられて、今日の夕飯がさの付くあれになったりしたら非常にまずい。
そんなわけで、オレは大人しく新一と一緒に遊んでやることにした。新一の希望通りのレースゲームで。何て心が広いのだろう。
「……オメーしっかりやれよ」
「いつもやってるって」
軽く新一は応えてレースは始まる。
始まってそうそう、何でこいつは逆走しているんだろう。
「おっまえなあああっ! どっち向いて! どっち向いて走ってんだよ! 何で逆走してんだよどこ目指してるんだよオメーはっ!?」
「……あ? あれ、オレもしかして逆走してる?」
「もしかしてじゃなくてしてんだよ! 今! オレが! オメーの横通り過ぎたじゃねーかよっ!」
「あー、反対車線かと思った……」
「レースゲームにんなもんあるかあっ!」
ちょっと待てよ、と言いながら、ゆっくり車を止めた新一は方向を変える。待てよとは、一体だれに向かって言っているのだろう。当然他の車が待つわけはない。オレだって然り。
オレは一位でゴールを切り、新一はビリでゴールを切った。当然の結果だった。わかりきった結果だった。つまらない。
「……つまんねーな」
この上、オレの台詞を奪わないでもらいたい。
「あのな、それはオレの台詞だっつーの」
「何だよ。一位でゴールしといて何がつまんねぇんだよ」
「勝負にならなかったんだから当然だろ! あのな、これイージーモードなんだぜ? 一番簡単なやつなんだぜ? なのにオメーはこれとか……逆走してるとか……!」
いっそ虚しすぎて悲しくなってくる。日頃ゲームなんてしないであろう青子や蘭ちゃんだって、もう少しまともなプレーを見せてくれるに違いない。
「うっせーな、オメー程やってねぇんだから仕方ねーだろ。つーか、一緒にやってんだから少しは手加減ぐらいしろよな」
「手加減してどうにかなるレベルかよ、これ! オレがどんだけ手加減したって、オメーが逆走してる以上どうにもできねぇよ!」
「逆走逆走ってうるせぇなオメーは本当に! 久々にやったから調子狂ったんだよ! 次はんなことしねぇよっ!」
「……いやぁ、もう」
お腹一杯です、とオレは言いたかった。
でも新一は気にせず、次のメニューを選んでしまう。
とりあえずオレは、目を瞑ったままでも、そのコースをゴールできるようになってしまったとだけ言っておこう。
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お題を元にした短編集2編入り。「Hello,knockin!!」の方は、TOPから繋いであったお題をサルベージしています。
サイトに上げていたのは9話までで、本の中では17P分程。その部分に関して加筆修正などはありません。
「Hopping Love hour」は新作で、付き合いたての大学生な二人の話です。割と3/4組な雰囲気。
始終快斗がぐだぐだと悩みつつも、それなりに工藤さんと仲良くやっています。多分。
[12.08.10]
12.8.19発行/13.04.25完売