「おい、何なんだよこれはよ」
不機嫌な声が聞こえた。
子供はとにかく喜怒哀楽は激しくていけない。些細なことでも喜んでくれる辺りはいいのだが、これまた快斗からすれば些細なことで同時に落ち込んだり泣き出したりするのだから困る。
「……あー、何だよ。今オレ忙しいんだけどな。後にしてくんねぇかな頼むからよ」
「テトリスやんのに忙しいのかオメーは」
「いやまあそういうこともあるんだって」
おかしい、新一の位置からは、携帯の画面など見えていないと思っていたのだが。
「……何なんだよ」
諦めて、快斗は振り返った。てっきり書斎にこもっているかとばかり思っていた新一は、不機嫌を隠そうともしない顔でその場に仁王立ちしていた。八つも年下とは思えぬ程の迫力を感じてしまう。
「それはこっちの台詞だっつーんだよ。何なんだよこれは」
「ちょっ、おま!」
そう言って新一が付きつけたのは。
それは間違いなく。
「どっからこれ見つけてきたんだよ! オメー、人の部屋探し回ったのか!? ンなことしてる暇があんだったら、勉強してろ子供らしく!」
「オメーの物に溢れた部屋なんて一々探し回るわけねぇだろバーロー! オレの貸した本を取りに行ったら、普通に机の上に置いてあったんだよ!」
「あ」
そういえば昨日、このDVDのお世話になったのだった。
その後で、どうしてしまうことを忘れてしまったのか、最早快斗にもわからない。なぜ部屋を出る時にも、気づくことがなかったのか。いつも通り、きちんとしまっておけば、こんな羽目にはならなかったというのに。
「……あー、しまうの忘れてたんだよ。うっかり置き忘れててな。教えてくれてありがとな、新一。うん、サンキュサンキュ」
受け取ろうと手を伸ばせば、とたんに新一は腕を引っ込める。目つきは相変わらずの鋭さだ。
「誤魔化す気かテメー」
「いや誤魔化すって」
しまい忘れたことも、そのまま置き忘れていたことも事実だ。何も誤魔化してなどいない。
けれど、新一がそこを指して言っているのではないということも、もちろんわかっている。携帯をソファの上に放り投げながら、快斗はため息をついた。
「……あのさ、確かにそれはエロいDVDだしさ、机の上に放置しといたのはまぁ褒められたことじゃねーかもしれねぇけどさ。……オメーも同じ男なんだから、ンな目くじらたてて怒ることでもねぇだろ?」
女性と付き合っている時でも、こんな状況に陥ったことはなかった。同棲などはしていなかったから、当然のことなのかもわからないが。
「……何で同じ男だったら、怒らずにいられるんだよ」
「いや何でって。だってほら、仕方ねぇってことはわかってんだろ。女と違って、男は性欲が溜まるもんなんだって。その年になりゃ、オメーだってこの手のDVDの一つや二つ持ってんだろ? あぁそうだ、それ貸してやろうか。けっこう良かったぜ」
親切心で持って言った言葉に、返ってきたのは顔面にばしりとぶち当たったDVDのパッケージだった。角が当たらなくて良かったと、そんな風に思える程快斗は聖人ではない。聖人だったら、そもそも十八禁DVDのお世話になることなど無いだろう。
「……てっめ、何すんだよいきなり! アホかオメーは!」
「アホなのはどっちだよ! テメー一度死にやがれ! 何勝手なことばっかほざきやがってんだよこのおっさんが!」
「だれがおっさんだよ! オレはまだぴちぴちの二十代だっつの!」
「うるせぇ!」
DVDを投げつけただけでは飽き足らず、空いた両手で新一はあろうことが殴りかかってくる。まんまと一撃食らってしまったが、けれど八つの年齢差は伊達ではない。
「……ったく、大人しくしやがれ、このクソガキがっ」
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快新年の差パラレル「-Life-」本。工藤さんが悶々としてたり盗一さんがちらっと出てきたり。
...12.10.01(12.10.07発行)