年の差ツイッターSS



正しいおかゆの作り方(モブ女性視点)

 ―――新一:おかゆってどう作ればいいのかな

 そんな珍しい呟きを目にしたものだから、ついついマウスを握る手も止まってしまった。
 呟き主は、東都に住んでいる高校生。もちろん私の弟でも従兄弟でも遠縁の親戚でもなければ、全くの赤の他人である。けれど今、一部の女性の間では、ちょっとした有名人なのではないだろうか。芸能人の関係者として。
 私が今、ハマりにハマっている新人タレント―――もとい、若手マジシャン黒羽快斗の同居人が、この『新一』君だと知ったのは、黒羽さんがツイッターを始めてからのことだ。
 それまでにもテレビや雑誌のインタビューなどで、度々「うちには手間のかかる奴がいるんで」やら「帰ってうちのに夕飯を作らなきゃいけないんで」等と漏らすことは何度かあった。
 おかげで最初こそは、すわ同棲しているのか、いや手間がかかるということは、よもや小さな子供でもいるのではないかとファンの間では騒がれたものだが、だからこそ他の芸能人にならい、早々にツイッターを始めてくれたことは幸いだった。
 毎日ではないが、頻繁に黒羽さんは新一君とリプライを交わしている。今日は遅くなるとか夕飯は何がいいとか、冷蔵庫に何が入っているからおやつに食べろとか、まあその内容が芸能人らしくないものであることは言うまでもない。
 でも、ファンにとってはそうした内容がまたありがたかったりするのだ。芸能人の素の一面や普段の生活。隠されているそうした面こそを、ファンは少しでも覗き見たいと日々思っているのであって。まあ全てのファンがそうだとは言わないが。
 とりあえず、私のようなファンにとっては、新一君の存在は何ともありがたいものだった。二人のやり取りから見える黒羽さんの人柄がまたたまらない。普段よりも少し口が悪いところとか、料理上手なところとか、ちょっと所帯染みているところなんかも、もう可愛くて可愛くてたまらない。
 閑話休題。
 それはそうと、今気になるのはこの新一君のツイートだ。私が新一君をフォローしてからというもの、新一君が料理を作る側でのツイートをしたことは一度も無い。ほぼ黒羽さんが作っていると見ていいだろう。
 しかもいきなりおかゆときた。
 これはもしかして。いや、もしかしなくとも。
「……黒羽さん、風邪でも引いたのかなぁ?」
 黒羽さん達が何人暮らしをしているのかは知らないが、他に家族の名前を聞いたこともない。恐らく二人暮らしだと思うのだが、どうなのだろう。

 ―――新一:快斗は風邪じゃない

 新一君のフォロワー数は日に日に増えている。一高校生のフォロワー数とは思えない程だが、そのほとんどは、私のような黒羽さんファンなのだろう。考えることは皆同じ。
 恐らくは何人もの―――いや、何十人、それ以上か―――フォロワーから、同じことを尋ねられたのだろう。本当に風邪でないのなら、なぜ急におかゆなのだろう。ただ食べたくなっただけなのか。

[13.03.22]
13.03.17発行 コピー本/16P/\100